第22回口頭弁論期日の報告

1月18日
関東地方は未明から積雪に見舞われ、交通機関は混乱しました。
このような時に原発過酷事故が起きたら…とふと頭をよぎりました。

遅くなりましたが、前回の口頭弁論期日の報告です。


口頭弁論
 12月24日10時30分、東京地裁101号法廷で東電株主代表訴訟第22回口頭弁論がおこなわれた。暮れも押し詰まっている時期のせいか傍聴席にはちらほら空席も出ていた。原告ら・弁護団側の熱気は言うに及ばず、裁判所側もこの訴訟に注ぐ熱意がひたひたと伝わってくる中でのこの状況はかなり残念であった。裁判は手に汗をにぎる佳境に入っているので、新年はぜひ多くの方に傍聴に来ていただきたいものである。
 この日の主な点の(1)は、原告ら弁護団より事実関係の時系列をまとめて提出していた東京電力および被告らの津波対策の検討とそのネグレクト行為の一覧表を裁判所がそのまま採用し、これらに対する被告らと東電の言い分(認否の有無)を、新たに設けた右欄に逐一まとめてくれていたことである。裁判所がこの作業をおこなってくれたおかげで、東電側が頭から頬かむりを決め込んでいることが何なのか、誰の目にも一目瞭然になった。
 裁判所はこれらの点について東電側に、1月29日までの認否を迫った。きちんと返答するように重要個所にはアンダーラインまで引いて。海渡弁護士が「しかし認否だけだと『否認する』だけで済ませてしまうかもしれない、それでは困る」と畳みかけたところ、裁判長は被告弁護団席に向かい、にこやかではあるが毅然と「事実と違うんだというところは準備書面にして下さいね」と告げた。
 次に(2)として、原告ら弁護団が申し立てている、内閣官房副長官補の所持する文書の提出命令についてである。政府事故調が取った調書のうち公務員や学者の分は公開が進んでいるが、東電役員や土木調査グループのメンバーからの聞き取りは、内閣官房副長官補が非公開の判断を下している。これを何としても公開させなくてはならない。刑事裁判の突破口にもなりえる大切な申し立てである。
 内閣官房副長官補は裁判所による文書提出に関する意見聴取に対し、数十ページの意見書を提出してきたという。しかしまだ付け加えたいことが残っているから追加の意見書を提出するとして引き延ばし作戦に出ている。裁判所とすれば言いたいことがまだあると主張する以上「お待ちするしかない」が、原告ら弁護団の要請により期限を設けて督促することを検討することしてくれた。また内閣官房副長官補の上司である官房長官からも1月12日までに意見書が提出される予定となっていることが確認された。
 次回期日は2016年2月4日午後1:30、次々回が3月24日、同じく午後1:30となっている(次回と次々回は午後の開廷になるので、おいでになる方は気をつけていただきたい)。
 裁判は大きな山場を迎えている。ぜひぜひ、再び抽選になるほどの多数の傍聴者をもって東京地裁の法廷を満たしたいものである。
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口頭弁論期日前の原告らによるアピール(東京地裁前)
 
 口頭弁論終了後の記者会見では、弁護団より海渡弁護士より以下のような報告があった。この間、東京第5検察審査会の議決書と、裁判所の指揮によって東電側から小出しに提出されてきた文書(証拠)によって、次第に事実関係が判明してきている。
まず2002年文部科学省地震調査研究推進本部(推本)地震調査委員会が「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」において、三陸沖から房総沖の日本海溝沿いで過去に大地震がなかった場所でもマグニチュード(M)8クラスの地震が,30年以内に20%の確率で起き得るとの見解(長期評価)を公表した。
 また2006年の耐震指針(改訂)新指針により、新しい基準に照らして安全をチェックする(耐震バックチェック)作業が始まった。この作業の終了予定は今まで藪の中だったが、実は3年をかけて2009年6月までに終了することになっていたことが、検察審査会により明らかにされたばかりである。
 共同通信の鎮目(しずめ)記者による「漂流する責任・上」(岩波『科学』12月号に収録)は、当時の原子力安全委員会事務局総務課長・水間英城氏にインタビューし、このチェックが必要な安全対策を取るためのものだったことを明らかにしている。
一方、社内の土木調査グループの検討結果を受けて、推本の長期評価を取り入れざるを得ないと判断した東電は、福島沖合の大きな地震により津波が発生する恐れありとして、2007年12月には対策を取る必要を認めていた。そして子会社の東電設計に依頼し、M8.3で起きる津波の高さを15.7mと試算させていた。これに基づき、記者会見で津波対策について質問された場合の想定問答集も用意して、質問があった場合は「対策を取る」と胸を張って答えることになっていた。
 しかし記者からの質問は一つもなかった。ここからたかをくくった(?)東電のネグレクトが始まる。どこかの社が質問していれば「対策を取る」と答えたはずの東電は、その通り何らかの対策を講じざるを得なかっただろうし、そうすれば原発事故は起きなかったかもしれない。
 恐らく東電の経営陣は防潮壁の建設のための莫大な出費を惜しんだのであろう。結局、武藤副社長は社内の土木調査グループに対し、推本の長期評価を取り入れない、土木学会の検討にゆだねる、バックチェックも終えられないから報告は延期、と申し渡した。そして、この方針に従って保安院と土木学会を説得せよと指令した。かくして保安院はバックチェックの最終報告を延期し、東電は津波対策をとりあえず先送りできた。しかしこれは土木調査グループにとっては本来、不本意だったはずだ。事故が起こってしまった時には落胆の余りほぞを噛んだはずだ。
 裁判所より時系列表の認否を申し渡された東電にはもはや逃げ場がない。原告ら弁護団によって追い詰められている。ここで良い結果を手に入れることが刑事裁判をも勝利に導くことになる。傍聴に来て下さい!

報告会と学習会
(報告会)
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 裁判報告をする海渡雄一弁護士(参議院議員会館 講堂)

 口頭弁論期日の後、裁判所から参議員議員会館に舞台を移して、いつも報告会と学習会をおこなっている。報告会は海渡雄一弁護士によって行われた。この訴訟の現在の状況を説明されたのであるが、非常に興味深い内容であった。
 既に、ブログに掲載されている録画のこの部分を是非ともご覧いただきたい。また、ここで話題となっているのは次の文献である。
・漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う(上)鎮目宰司『科学』2015年12月号
・漂流する責任:原子力発電をめぐる力学を追う(中)鎮目宰司『科学』2016年1月号

(学習会)
 この日の講師は原発事故被害の救済のため精力的に活動されている福田健治弁護士。「被曝を避ける権利を求めて・福島原発の被害と被害者支援」というタイトルでお話をしていただいた。

1. 福田弁護士は「自分は医者でもない、科学者でもないので」と断ってから低線量被曝のリスクと、現在判明している子どもの甲状腺ガン発生との関連について説明した。
・年間100mSv(ミリシーベルト)を超える被曝については広島・長崎などで発ガンリスクがはっきり確認されている。
・100mSv以下の低線量被曝に関しては、疫学的に多くの人を対象にしなければ影響がわからない。現在は統計学的に有意な影響がないことが前提となっている。しかし海外ではガン患者の登録から医療被曝や原発労働者の疫学的データを取れている国があり、チェルノブイリ事故後の調査からも低線量被曝のリスクが有意に証明されている。
・通常なら小児甲状腺ガンの罹患率は100万人に1人くらい。福島では先行検査と本格検査合わせて50万人が受診し152人に甲状腺ガンが見つかった。この割合の差について ①被曝によるのか、②過剰診断によるのか、見解が分かれているが、これだけの差は後者では説明できないだろう。

2. 被害にはまだ分からない部分がたくさんある。不安を抱えて生きている人が多い中で帰還が否応なしに進んでいる。自主避難を選んでいる人もいれば、自主避難したくても周りの人々への配慮や経済的理由などで避難をできずにとどまっている人もいる。
・自分がどのように生きて行けばいいのか自分で選べるようにしなくてはならない。そのためには情報公開と自主避難者への長期的支援が必要である。
・権利としての避難→国家に対する請求権:国には原発事故を起こした責任がある
・賠償で十分か? そもそも東電による賠償は事後的なので、まずは自分で出費しなくてはならない。それも実際に賠償されるかどうか、判決や決定が出るまでわからない不安がある。
・本来なら政府が前面に立って補償に取り組むべきなのに、避難者がこうして犠牲を強いられている。

3. 2012年に議員立法により成立した『原発事故子ども・被災者支援法』は被災者の生活支援の理念をうたっていて格調高かったが、具体的内容については「基本方針」を定めた上で運用されることとなっていた。
・この「基本方針」は1年以上にわたって棚ざらしにされ、ようやく成立した時にはまったく骨抜きにされていた(被災者に対しむしろ現行の支援を打ち切るものになった)。

4. 一方で内閣により提出され成立した『福島復興再生特別措置法』は避難指示を解除し早急な帰還方針を住民に押し付けるものになっている。
・復興庁は2015年、年間20mSv以下の地域への帰還を促進する指針を出して住宅補助の打ち切りを宣言した。これは望まない住民に帰還と被曝を強制するものである。
・何らかの健康診断対策の対象となるのは福島県、それも浜通り・中通りの33市町村だけで、しかも、対象は甲状腺ガンのみ。他の健康被害の可能性を一切無視している。
・福島県以外でも実際には汚染地域があるが、その住民に対しては何の対策もない。
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福田健治弁護士(参議院議員会館 講堂)

 こうした帰還の強要に対し被害者の権利を守るため、1mSvまでは避難の自由が認められるべきであることを主張して、南相馬市の特定避難勧奨地点の住民が解除の取り消しを求め提訴した。栃木県の汚染地域でも住民が立ち上がった。被害者の権利を守ることは国や東電に義務を果たさせることでもある。住民の側から切り捨てに反撃していくために、福島原発告訴団など9団体が2015年5月8日『ひだんれん』を結成した。
 原発に反対する人々が連帯し合って今後も闘いを進めていきたいとして福田先生のお話は終わった。
 国の施策は被害者に分断を持ちこんで互いの立場を見えにくくさせていることがよく分かった。ことに20mSvの押し付けは、国民を守る義務のある国のすることとは到底思えない。この国のあり方を問い直さなければならないと考えさせられた。
(原告:堀浜)

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