4月5日
前回の口頭弁論期日の報告をアップいたします。
4月3日には原子力規制委員会が、東電は原発などから寄せられた計33件のトラブル情報を放置していたと発表し、原発の運転や管理のルールに違反していると認定し、改善を強く求めました。このような会社に、原子力発電所を動かす資格はあるのでしょうか。新元号の発表に「新しい時代が来た」等のコメントに、忘れやすく、同調圧力文化のこの国に大きな不安を感じます。
3/28第46回口頭弁論期日 原告報告
花冷えの3月28日、午後3時より、東京地裁103号法廷で東電株主代表訴訟の第46回口頭弁論期日が開かれた。
今回から裁判長が代わり、新たに江原健志裁判長が訴訟指揮を行うこととなった。前任の大竹氏は自ら事実経過表を作るなど事実解明に意欲的だっただけに、これから後半戦へと向かう中、新裁判長にも是非この裁判の重要性と社会的注目度の高さをアピールしたいところだ。が、通常と違い午後3時からの開廷で、報告・学習会をセットできないこともあってか、傍聴人がいつもより少なく、満席にできなかったのが残念だった。
裁判長はまず、原告側が本裁判所に送るように申したてていた刑事裁判の証拠が、DVD以外は採用されたことを述べた。これは、今後の事実解明と立証に向け大きな武器になるだろう。続いて裁判長は、原告が補助参加人である東京電力に前回から提出を要請していた文書について回答を求めた。これは、刑事裁判において武黒被告が吉田昌郎原子力整備管理部長(当時)から、長期評価や15.7mの津波シミュレーション数値等の説明を受けたと述べた、その説明時の資料で重要な文書である。ところが東電は「引き続き検討する」と、またしても引き延ばし戦術。次回5月の進行協議までには回答すると述べたが、この不誠実な対応一つとっても、東電には今後も原子力事業を続けていく資格など無いと思ってしまう。
次に、原告側の甫守弁護士がプレゼンに立ち、今回提出の準備書面(38)についてパワーポイントを用いて説明した。この書面は、東電の結果回避可能性は無かったという主張への反論とともに、「建屋等の水密化」「非常用配電盤等の高所設置」に関わる主張を補充するものだ。
甫守弁護士はまず、2004年のインド・マドラス原発の津波による海水ポンプの機能喪失事故を受け、東電も参加した保安院主催の溢水勉強会が始められたこと、そこで保安院から、想定外津波により重大事故に至る可能性が高いことから、早急に対策を検討するよう要望されていたこと、福島第一原発の現地調査も行った上で、東電側でも水密扉設置などの水密化やさらなる外部電源の確保などの対策が考えられていたこと、また2006年10月にはバックチェックに係るヒアリングで、対応策について経営層にも伝えるよう求められていたこと、にもかかわらず東電は3.11に至るまで何ら有効な手立てを講じなかったことなどを、刑事事件の書証記録、今回提出した渡辺敦雄さん(元東芝の原発設計技術者)の意見書に基づき、歯切れよく説明した。
さらに、同じく書証等を基に、各号機の浸水状況を図によって具体的に示しながら、対策を講じても防げなかったとする東電の主張をことごとく崩し、対策により防げた、中でも水密化は一番効率の良い対策だったことを論証した。そして最後に、2017年以降に全国各地で出ている福島原発事故の損害賠償請求訴訟の判決では、7例中6例が水密化や高所設置の結果回避可能性を認めていることを示してプレゼンを終えた。
続いて裁判長が次回以降の期日を確認して、今回は終了。新裁判長による訴訟指揮は、全体にさくさくと合理的な印象を受けたが、今後も事実と証拠に基づく誠実な判断を期待したいと切に思う。
司法記者クラブ(東京地裁・高裁2階)
裁判後に行われた記者会見で海渡弁護士は、今回提出の準備書面(37)では、刑事事件の書証等を基に予見可能性を根拠づける事実経過を述べ、準備書面(38)では、刑事裁判ではやっていない溢水勉強会などの細かい部分について論証し、結果回避可能性の論拠を補充したと説明。また甫守弁護士は、東電に要請していたリスク管理委員会の資料がようやく白塗りながら出てきた。刑事裁判では出ていなかった論点なので、今後論証を深めたいと発言した。さらに海渡弁護士は、そろそろ大詰めを迎えようとしているが、東電側からも刑事裁判の書証を整理した主張が提出されるので、さらに反論が必要となるかもしれない。見通しとしては、秋頃から証人尋問に入れればよいと考えていると述べ、今回出した渡辺敦雄さんの意見書も読んで、いい記事を書いてくださいねと結んだ。が、記者からはほとんど質問が出ず、ちゃんと勉強しているのかな~?といささか不安な思いで、会場を後にした。
今回の期日を経て改めて思うのは、検察により不起訴となった刑事事件を検察審議会の二度にわたる起訴相当の議決により強制起訴による刑事裁判が実現し、進められてきたことの意義の大きさだ。黙っていたら、闇に葬られていた膨大な証拠がそれにより日の目を見ることになり、さらに裁判の進行により、貴重な証言が山のように出てきたのだ。私たちの株主代表訴訟はその書証等を活かし、追及の論拠とすることで、事実解明と責任を明らかにするという役目を担っている。
あたかも何もなかったかのように再稼働が進められようとしている中、この9月に判決を迎える刑事裁判とともに、株主代表訴訟の意義も改めてもっと、もっと訴えていきたいと強く思った。
次回以降の口頭弁論期日は、5月30日(木)、7月11日(木)(いずれも午前10時30分、東京地裁103号法廷)。ぜひ多くの皆様の傍聴をお願いします!
(まめこ記)
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