2011年3月11日の東京電力福島第1原発事故を起こした東京電力。取締役の個人責任を徹底的に追及する東電株主代表訴訟。株主代表訴訟ですべての原発を廃炉に!
2月5日
先日の期日報告です。
1月23日いつもより30分早い10時より、東電株主代表訴訟第52回口頭弁論期日が開かれました。氷雨が降る中、電車の遅れなども加わり、傍聴席は空席も目立ち40人程度。が、中に8名ほどの若い学生の一群が。彼らは法政大学法学部の入学予定者で、入学前に裁判を傍聴するよう指示されて地裁に来たとのこと。それを知った原告メンバーが「この裁判はプレゼンもあり面白いよ」と勧めた結果、この法廷を訪れたという訳。事故当時は小学生だったであろう彼らが、今日の傍聴で、風化しつつある福島第一原発事件について再認識し、東電株主代表訴訟、さらに本件被告らに対する刑事裁判に関心を持ち、法の正義を実現する担い手となるきっかけとなってくれたら嬉しいのだが。
法廷では、まず海渡弁護士が、原告側が今回提出した高裁の刑事部への文書送付嘱託の申し立てについて説明しました。これは、刑事裁判の法廷で行われた双葉病院の看護副部長の証人尋問調書や、救出に向かった自衛官の供述調書など被害関係の証拠の送付を求めるもので、患者がベッドのまま屋外で待機させられたり、放射線値が高いため駆けつけた自衛隊が途中で引き揚げたことなど、患者さんたち被害者が亡くなられる状況がつぶさに語られている。昨年地裁の刑事部にも申し出たが、個人情報保護を理由に採用されなかった。しかし、原発に求められる安全性のレヴェル(すなわち、被告取締役らに高度な注意義務が求められること)を考えるとき、非常に重要な証拠であり、裁判が高裁に移ったことで改めて申し出る。ぜひ採用してほしい、と述べました。これに対し、裁判長は、被告側から出ている反対の旨の意見書を検討し、高裁刑事部の意向を踏まえて採用の有無を判断すると答えました。
次に、裁判長は原告側に、今後の主張立証について尋ねました。これについて海渡弁護士は、刑事判決が双葉病院の被害実態をスルーしている点、長期評価に基づく15.7mの予測には原子炉の停止を義務付ける程の予見可能性がなかったとして他の対策に触れていない点、2月16日のいわゆる御前会議の前後の経過の認定が、よく読むと落ちており、2月初めに武藤被告が4m盤を囲うべきとの発言をしたが、核物質防護のためと言い訳していること、それらの対策方針に異論がなく了承されていたこと、3月7日の津波対策キックオフミーティングの内容など、刑事判決が落としている点を拾って主張していくつもりであると答えました。裁判長が書面の提出時期について尋ねたのに対しては、次回に裁判所が検討できる何かは出す予定であり、立証の方向をある程度示したい旨を伝えました。
最後に裁判長は、次回の口頭弁論期日3月3日(火)14:30に加え、新たに4月27日(月)13:30を指定し、閉廷となりました。次からは、ぜひ傍聴席をいっぱいにしましょう!
海渡弁護士が法廷でのやり取りの解説に加え、刑事事件の2審の開始はまだ先になりそうなので、株主代表訴訟で送付嘱託が採用されれば、刑事よりも早く進められそうだということ、一審判決を踏まえての立証は次の1~2回で集約し、証人調べに入っていく見通しであることを説明しました。
原告の木村さんからは、一審判決では双葉病院の患者たちへの人権蹂躙の事実が個人情報として隠されてしまったが、これは政府が行った人権侵害の事実を隠そうとしたのに他ならないと指摘しました。
河合弁護士は、地裁刑事部はこの文書送付について個人情報を理由に拒否したが、安倍政権の桜を見る会についても同様で、昨今個人情報保護が隠蔽のおまじないになっている。このままでは、覆面社会になってしまう。メディアも保護法のどの条文に抵触するのか問い詰めるなど、この点に強く対応してほしいと、記者らの奮起を促しました。
証人は誰になるのかとの記者の質問には、すでに意見書を提出している渡辺敦雄さん、その他原子力技術者の方を予定していると回答しました。
裁判報告は甫守弁護士が行い、文書送付嘱託について裁判長は高裁刑事部と交渉し、認められれば採用という姿勢だったので、期待したいと述べました。また、次回期日は海渡弁護士の刑事判決を踏まえた書面が出ること、自身が担当している結果回避措置についての書面も提出予定であること、さらに4月から主任であった右陪席が変わり、新たな構成になる可能性があるので、改めて新陪席にもしっかり伝えていく心構えであることが語られました。
学習会はまず、原告でたんぽぽ舎副代表でもある山崎久隆さんが講師となり「東海第二の再稼働と原電への資金支援~経理的基礎が存在しない日本原子力発電」と題する詳細なレジュメに基づき、パワーポイントを使ったレクチャーが行われました。東海第二原発が、規制委員会から再稼働の条件として課された資金調達の裏付けについて、東北電力と、あろうことか破産状態の東電に資金支援の意向があるということで経理的基礎があると判断され、GOサインが出されたことについて、いかに不合理、不透明な事実と経過を重ねた結果であるかが解き明かされました。また東電に資金援助する資格はないが、支払いについて100%子会社の東電エナジーパートナー(EP)が行うと決めて責任逃れを図っていること、国は新たな原子力事業への補助金制度を画策し、すべての矛盾を消費者に押し付けようとしていることなどを、具体的な資料を基に明らかにし、日本原電に経理的基礎はないと結論付けました。せいぜい10年程度しか運転できない危険な原発に3500億も費やそうというこの計画を、電力会社のみならず、規制委員会や国も一体となって推し進めているとんでもない事態を何とか止めねばと改めて思いました。
続いて、原告の木村結さんから、「日本原電支援」差し止め訴訟について説明がありました。これは、東電に対し原告株主2名が提訴している訴訟で、本訴と仮処分の二本立てで、東電が東海第二原発の工事費用を電力料金の前払いという形で経済支援するのを止めるよう求めています。東電が責任逃れのため、支払いを東電EPに一任したことについても、取締役会で決定した文書を請求するなどして追及していくとの表明がありました。次回の口頭弁論は、2月20日(木)13:15からです。ぜひ傍聴しましょう!
会の最後に、朝の法廷の傍聴からずっと参加してくださった原告でもある武藤類子さんから福島の現状について報告がありました。9月の判決には、皆納得できない思いで落ち込んだ時期もあったが、年明けから心新たに、高裁の開始を今年中に求めようと活動を開始しているとのこと。映画「東電刑事裁判 不当判決」(ユーチューブでも見られる)のDVDがよく売れている中、映画館での上映も働きかけ、すでに名古屋(名古屋シネマテーク2/8~14)や福島での上映も決まっているそうです。
福島の現状については、原発敷地内の排気筒の工事が難航し、人が登って行うという最終手段で行われるなど、労働者の犠牲が大きくなっており、今までに死者が20名、重傷者、負傷者も増加の一途をたどっていること、昨年の台風被害で地下の埋設物や、除染していない森から放射性物質が流出したり、事故により移転し新築した家が水没するなど、放射線の被害が思わぬところにも広がっていること、避難者への住宅からの立ち退きや家賃の2倍請求などの施策が推し進められている一方、復興五輪ということでJヴィレッジから聖火リレーをスタートさせ、小学生が芝生を植えるため動員されているなどの状況が語られ、いつもの静かに抑えた口調ながら抑えきれない憤りがひたひたと伝わってきました。このような状況に対し、2月29日、3月1日に「福島はオリンピックどころじゃね~!」と銘打ったイヴェントを企画中、また2月24日には東京の文京区民センターで「控訴審の勝利を目指す集会」を開くので、ぜひ結集を!との熱い呼びかけで締めくくられました。
(原告:まめこ)
東電株主代表訴訟のアピールの前、刑事訴訟支援団による「東京地裁前 行動」
マイクを握り、原発事故の疲憊を訴える武藤類子さん
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