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託送料金に上乗せされる「賠償負担金」とは何か

11月16日
東電株主代表訴訟の代表でもある堀江鉄雄さんより転載します。

  託送料金の訴訟を起こしたグリーンコープさん、頑張ってくださいよろしくお願いします。ターゲットを問題点の多い「賠償負担金」に絞れば勝訴できます。

 電力自由化は、公正公平な自由競争でなければなりません。そのために大手電力会社を分社化したのです。特に電力の公共道路である送配電事業はニュートラルでなければなりません。そのために電力自由化後も託送料金は規制料金(総括原価)なのです。その託送料金に一発電源である原発の原子力関連費用(賠償負担金、廃炉円滑化負担金等)を上乗せしては公平な自由競争にはなりません。

 特に「賠償負担金」は、原子力保険制度の不備と保険金額(賠償措置額1200億円)不足の責任を電力消費者に押し付け、「過去分の保険料」などという「架空の債権」を主張して追加請求しているのです。このことは保険業界のみならず商品取引契約上では考えられない暴挙です。

 清算している過去の電気料金を遡及して追徴することは、流行の水道工事の追加請求よりも悪質な詐欺商法に類似するものです。この「賠償負担金」を突破口にすれば、送配電事業から原子力関連費用を締め出すことのできる最後のチャンスとなります。

1 「賠償負担金」とは

(1)「賠償負担金」の法的根拠
貫徹委員会の中間報告(なぜか最終報告はない)の検討内容を2016.12.20閣議決定で具体的な方向付けしました。それを法令化したのが電気事業法施行規則に第五節の二「賠償負担金の回収等」(第45条21の2から4まで)の新設です(「廃炉円滑化負担金の回収等」は第45条21の5から7まで)。
<施行規則第四十五条の二十一の三>
 「 ・・・原子力損害(原賠法第2条2原子力損害)の賠償のために備えておくべきであった資金であって、原子力事業者が平成23年3月31日以前に原価として算定することができなかったものを」送配電事業者が回収するときの資金を「賠償負担金」という。
 つまり東電の事故前に原賠法の原子力損害賠償として備えておくべきであった資金(賠償措置額)で、事故前に「電気料金の原価」に算定できなかったもの(保険料)を「賠償負担金」と規定しています。
電気事業法施行規則
 
(2)「事故前に備えておくべきであった資金」とは何か
 今回の事故前に原子力損害賠償に「備えておくべきであった資金」とは、「備えていた資金(賠償措置額1200億円)」では足りなかった資金との解釈になります。今回の事故では、原子力損害賠償責任保険は免責で適用されませんでした。原子力損害賠償補償契約の適用で「補償金約1900億円(2F分含む)」が支払われています。

 現時点で今回の事故で損害賠償に必要な額(要賠償額)は13.5兆円です。この要賠償額から補償金1900億円を控除した資金が足りない(備えておくべきであった)資金です。その足りない資金とは、支援機構から東電に贈与されている「損害賠償交付金」です。

 今回の「賠償負担金」の規程には、「備えておくべきであった資金」とその金額については明示されていません。

(3)「原価として算定することができなかったもの」とは何か
 「備えておくべきであった資金」が損害賠償保険金(補償金)との解釈に立てば、「原価として算定することができなかったもの」とは、電気料金に算入できなかった保険料(補償料)ということになります。

 何故、「原価として算定することができなかった」のかといえば、事故前に「見積ることのできない(想定外の)」損害賠償費用は賠償措置額(保険金額)にすることはできません。また、賠償措置額(保険金額)にならなければ、その分の保険料は電気料金に算定算入することはできないということです。

原価として電気料金に算入できる保険料は保険金額によって決まりますから、「備えておくべきだった保険金額」分の保険料は電力消費者の負担すべきものであるとの理屈です。

 つまり「賠償負担金」とは、「備えておくべきだった保険金額」に相当する「過去の保険料」を負担しろということなのです。

(4)備えておかなかった保険金
「備えておくべき」損害賠償額(保険金額)が低かった、足りなかったのは損害賠償費用の見積が出来なかったからでしょうか。事故前に損害賠償費用を2兆円と見積もっています。そのとき賠償措置額(保険金額)を2兆円にすることを見送っています。「備えておくべき資金」は、「備えておかなかった資金」保険金額なのです。

備えるべき保険金額を低く押さえておいて、いざ保険金額が足りなくなったからといって、その足りない分の保険料を負担しろとは良くいえたものです。

2 原子力損害賠償保険制度の不備

(1)不備の責任は電力消費者にあるのか
 事故前には「備えておくことができなかった保険金」と「算定できなかった保険料」は、誰がいつどう決めたことなのか、その不備の責任は誰にあるのか。損害賠償保険契約の保険金額、保険料、免責条項などを取り決めた契約当事者は原子力事業者であり、日本原子力保険プールであり政府です。その契約内容の決定に電力消費者は参加していません。

 原子力損害賠償保険における保険金は、「賠償措置額1200億円」と法令で定められ、補償契約における補償料は保険料率3/万(事故後20/万)と決められています。したがって、損害賠償保険契約内容ついての法的責任は電力消費者には全くありません。

 原子力損害賠償保険の法制度、保険設計の不備の責任を電力消費者に押し付けるのは筋違いです。

 また、電気料金の算定における保険料の算入決定についても、規制料金であった電気料金の適正についても電気料金規制委員会(?)において算定・算入の判断をしており電力消費者に責任はありません。

 電力消費者は、規制料金で決められた電気料金を支払うだけで、損害賠償保険契約には何の関与もできず責任もないのです。それを事故後に保険金を「備えておくべきだった」として「過去の保険料」を請求しているのです。

 そんな幻の「過去の保険料」を請求する法的根拠はありません。電力消費者には支払う義務はありません。

(2)何故、「賠償措置額」の見直をしないのか
 もし備えておくべき資金に不備があるならば、なぜ事故後十年も経過しながら将来の事故に備えた「賠償措置額1200億円」の見直しをしないのでしょうか。保険金の見直しをすれば、保険料も見直しされて将来の事故に備えるというのが普通の損害保険です。

 将来の保険金の見直しせず、過去の保険料だけを見直して負担させるという無茶苦茶な理屈は通りません。

 再び損害賠償事故が起きた場合、また同じように足りない保険金を過去分保険料として遡及追徴するのでしょうか。

 民間の原子力保険プールは、責任保険契約では保険金1200億円以上の増額はできないとしています。しかし、今回の事故には政府との補償契約が適用されています。責任保険とは切り離し、「賠償措置額」と補償契約の「補償金額」を増額することは可能です。まずは不備を正すことが先決です。

 保険とは、将来のリスクをヘッジするものであり事故前の保険金、保険料を遡及して見直し、修正、回収することなどできません。そんな保険はありません。まして過去分の保険料を支払ったら、その分の保険金を受取れるというのですか。

3 商品取引法違反?

 商品取引契約としての電気料金の支払は、受電し電気料金を支払った時点で債権債務関係は清算されています。電気料金は規制料金ですから、その時点での適正な電気料金として認定されているのですから追加、追徴することはないはずです。それを過去に遡及して電気料金を追徴するというのは商品取引契約違反です。

 事故が起きたときの損害賠償費用は、「事故後」の電力売買契約で電気料金に反映されることはあります。しかし、「事故前」の電気料金に遡及して追徴するということは、事故前の電力売買契約を一方的に破棄することと同じです。

「事故前の過去の電力売買契約」を一方的に破棄し、一方的に「事故前の過去の電気料金」の追加請求だとして、電力消費者が直接商品取引契約のない、出来ない「事故後の託送料金」に勝手に上乗せし、有無を言わさず「過去分の保険料」を追加徴収することは商品取引の基本的ルールを無視するものです。

 石油会社の貯蔵タンクが爆発して損害賠償費用が発生した時に、損害賠償保険ではカバーできなかったとして「過去のガソリン代」に遡及して損害賠償費用額分を請求したことがありますか。まして過去分だとして高速道路料金に上乗せしたことがありますか。

 原子力事業だから、電気料金だから、託送料金だから特別にすることは許されません。電力自由化の下ではなおのことです。

 4 保険料3.8兆円の回収

(1)過去分の保険料は3.8兆円
2016.12.20閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」

P26「・・・国民全体で福島を支える観点から、福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担とし、そのために必要な託送料金の見直し等の制度整備を行う。」

注14「 また、回収する金額の規模は、現在の一般負担金の水準をベースに、1KW当たりの単価を算定した上で、これを前提に、2020年度前の2019年度末時点までに納付した又は納付することになると見込まれる一般負担金の合計額を控除した約2.4兆円とし、これを上限とする。

 資金の回収に当たっては、適正な託送料金水準を維持していく観点から、年間約600億円程度を、2020年度以降、40年程度にわたって回収していくものとする。」

 この閣議決定で「 福島第一原発の事故前には確保されていなかった分の賠償の備えについてのみ、広く需要家全体の負担」とする。「 回収する金額の規模は、2020年度前の2019年度末時点までに納付する見込まれる一般負担金の合計額を控除した約2.4兆円とし、これを上限とする。」として、19年度までに納付する一般負担金約1.4兆円+20年度からの一般負担金2.4兆円=回収する金額は3.8兆円ということになります。

 託送料金の値上げを考慮して、託送料金での回収は600億円×40年=2400億円としています。

 しかし、回収する3.8兆円は、19年度までは一般負担金(電気料金)で約1.4兆円を回収して、残り2.4兆円を20年度から託送料金で回収するとしているのです。託送料金で回収するのは2400億円なのか、上限の2.4兆円なのか不明です。

(2)過去分保険料3.8兆円の算出根拠
 過去分保険料3.8兆円の算出は、「備えておくべきであった資金(保険金)」からの算出ではなく、なぜか事故後の一般負担金1630億円/年を算出基準にしています(施行規則第四十五条の二十一の三の3)。 

 この一般負担金1630億円の算出根拠は、2012.11.07東電の「再生への経営方針」の中で、当時の交付国債(損害賠償交付金分)「5兆円(現在13.5兆円)」を前提とした「借入返済計画」にあります。

 この一般負担金1630億円は、5兆円の借入金(交付国債)の返済金額(国庫納付)を原子力事業者ごとに分担負担する金額の合計です。要損害賠償費用に足りない借入金(損害賠償交付金)から保険料を算出するなら、借入金13.5兆円で算出するべきでしょう。当初の負担を軽くするための姑息なやり方です。

 東電の損害賠償費用の分担負担は、原賠法第4条「責任の集中」に反するものです。

 東電の損害賠償費用の電気料金、託送料金での電力消費者への負担も、原賠法第4条「責任の集中」に反するものです。

 ▼東電「再生への経営方針」2012.11.07

 返済金額5兆円 年間一般負担金1630億円、特別負担金500億円、2035年まで23年間(その後の13.5兆円の返済期間は、東電株の売却益によると会計検査院はしている)。

5 過去に遡及する「保険料と電気料金」

 賠償負担金は、過去の保険料と電気料金を遡及徴収するという滅茶苦茶な架空請求です。

(1)過去に遡及する保険とは何か
 保険に過去に遡及する保険などあるのでしょうか。保険とは将来のリスクに備えたものです。現在分といえるのは事故などの被害が現在も進行中で、被害費用の損害額などの最終確定していないものです。過去に遡及する保険などありません。それは保険とは言わないはずです。

 東電の損害賠償費用は、まさしく事故後に発生した現在分です。その補てんは過去の損害賠償保険契約の範囲内でしかできません。過去に遡及して新たに付保できるような保険はありません。

(2)過去分の保険料の支払先
 遡及して「過去分の保険料(補償料)」を誰に支払うのでしょうか、原子力保険プールの責任保険は関係ないので政府ということになります。過去分の保険料を支払うと遡及して「保険金(補償金)」は支払われるのでしょうか。支払われないとすれば、何のために過去分の保険料を電力消費者は支払わなければならないのでしょうか。

 しかし、現実には「事故前」の過去分の保険料は、すでに一般負担金として支援機構に回収され、支援機構の「事故後」の借入金返済(国庫納付)に使われているのです。

 まして損害賠償費用は、特別損失ですから原価算入できません。原価算入できるのは、将来の保険料です。

6 過去分の保険料で支援機構の借入金返済

(1)一般負担金とは何か
 なぜ過去分の保険料3.8兆円を一般負担金で回収するのでしょうか。

 一般負担金は支援機構法によって「支援機構の業務に要する費用」と規定されており、損害賠償保険の「過去分の保険料」は支援機構の業務に要する費用ではありません。「事故後」に成立した支援機構は、「過去分」の保険料を徴収する根拠はありません。

 あるのは「将来の事故に備えた共済(保険的)のようなもの」として積立てることです。一般負担金を電気料金の原価として経費算入できた理由のそれは「過去分」ではなく「将来分」です。

 しかし、現時点まで支援機構に共済金といえる積立金はありません。一般負担金は、すべて交付国債の返済になっています。

 一般負担金は、2016.12.20閣議決定で「負担金は、交付国債の返済原資」とされています。実際にこれまでの一般負担金は、支援機構の返済金(国庫納付)に使われています。規制料金であった「電気料金」に、規制料金である「託送料金」に、原子力事業者(一発電事業)の集まりである支援機構の「借入の返済金」を算定・算入することができるのでしょうか。

(2)過去分保険料算出のデタラメ
 「事故後」の一般負担金を算出根拠にして、「事故前」の過去の保険の保険料を算出することなどできません。保険料は、保険金と保険料率から算出されているからです。

 原子力損害賠償保険契約は、発電量あるいは発電設備容量ごとではなく発電所ごとの保険契約です。保険料は、保険金1200億円に保険料率を掛けて決まります。ですから逆にすれば、保険料3.8兆円を保険料率で割れば保険金額になります。しかし、この金額は、過去の何年分の何発電所分なのか分からないと1発電所の保険金額は分かりません。

(3)過去の保険料を誰に支払うのか、支払ってどうなるのか
 「賠償負担金」過去分の保険料は、保険料として誰かに支払うのではなく、「賠償負担金」は文字通り「一般負担金の負担金」なのです。回収される「賠償負担金」は、事故前の「過去の保険料」であるにも拘らず、一般負担金として事故後の支援機構の借入金(交付国債)の返済金(国庫納付)になります。

 原子力事業者の集まりである支援機構の借入金13.5兆円の返済原資となっているのです。

 「国民全体で福島を支える観点から」は、「東電の救済と原子力事業を支える観点から」なのです。
以上

 
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