否定する言葉は明確に発言するのに、合議制の会議をやったのに、津波対策を先延ばしにするために土木学会に3年も与えて検討させる決定を武藤さんと武黒さん2人だけで行ったのですか? 推本が言っていることが理解できなかったら、何故専門家集団の推本に聞かずに、専門家ではない土木学会に検討させるという決定をしたのですか? という質問には返事をしません。
この日も川村裁判官から鋭い質問が投げかけられ、武黒氏は、長期評価部会は異論が多い組織であり信頼できないと吉田に言われたと、またもや部下のせいに。丹下裁判官からは、山下さんは対応打ち合わせ会議で武黒さんに説明したと証言しているが、と尋問されても、説明されていない、積極的な記憶はないと返答。積極的な記憶? 安全対策を検討している会議にどのような態度で臨んでいたのか? 国会でも一番態度の悪いことで有名な麻生大臣のように居眠りでもしていたのでしょうか?
朝倉裁判長も鋭く追及します。万が一にも事故を起こしてはいけないというのが大前提だと思いますが、何か対策をしなければいけないとは思わなかったのですか? 土木学会が想定していない海域での推本の津波予測が出たのに、それも考えなくてもいいと思った?
午後からは、当時会長だった勝俣被告。東大卓球部の後輩として、卓球は下手だが切れ者だったと慕っていた河合弘之弁護士が尋問に立ちました。東電の意思決定機関である常務会に原子力担当の武藤氏は、推本の評価を付議しなければならなかったのではないか? 土木学会に委託を決める前に常務会に付議するべきではなかったか? 下から上がってこなかった、会議では説明を受けていないと、最高責任者であるにもかかわらず、知らない、相談されていないを繰り返してきた勝俣氏に問いただすと、付議されたら議論はしたと言いながら、15.7mは試算値であり、信頼できるものではなかったと。事前に何度も何度も代理人と練習を重ねた成果を披露するのみ。データ改ざんを受けリスク管理体制を作った勝俣氏、部下が常務会に付議しなかったリスクを放置した勝俣氏自身に責任があったのではないかと追及されても、顔色を変えることもありませんでした。
大河陽子弁護士に交代し、吉田所長の事情聴取発言や刑事裁判での山下証言を問いただしますが、吉田の勘違い、山下の勘違いと一蹴。14mの津波が来ると言っている人もいると吉田は言ったが懐疑的な物言いだったと、その時の口調までリアルに言うのに、自身に都合の悪いことになると部下の勘違いと自身を正当化します。川村左陪席の質問には、吉田はヤクザっぽい物言いだったとまで表現。
15時からは清水正孝被告。長年東電株主として脱原発運動をしている私にとって最も存在感のない社長。巷でも勝俣院政と言われていました。チリ津波、津波対策工事などについて聞かれても、知らないと平然と言い放ち、自身が議長を務めていた40分の会議についても、説明は受けていない、バックチェックについて、福島県での対応Q&Aの改訂版についても見ていないと。丹下右陪席の質問には、社長ではあるが、原子力については原子力本部長に任せていた。高度な技術的な事項などもすべて任せるということか? という質問には、そうですと。すると丹下裁判官は、内容を聞かなければ技術的なものなのかどうかはわからないのではないですか? と。朝倉裁判長は、津波は重要な課題だったのでは? 安全を確保するのに大事なファクターでは? 津波が対策工事していない時に来たらどうするかを考えたんですか? 覚えていないんですよね? あまり重要じゃないんですね、積極的に対策が必要なこと、お金がかかることは常務会や取締役会にかけないといけないのに見過ごしたのですか? と、何を聞いてもまともに答えない清水被告に嫌味を言い放った。
これまでいくつもの裁判の原告となって傍聴もしていますが、この株主代表訴訟のように、裁判長、左右の陪席が熱心に専門家証人や被告本人に質問するのを見たことがありません。弁護士さんたちも驚いています。
法廷では、不規則発言が禁じられているため、私は被告の視野に入る位置に着席し、被告の誠意が見られない発言に目を見開いたり、頭を振ったりして精一杯の抗議を表しましたが、裁判長が開始の際、裁判官は真剣に話を聞いているので、声がしたり動いたりするとそちらに意識が奪われてしまうので注意してくださいと言われてしまいました。確かに朝倉裁判長は、専門家証人の際も身を乗り出して聞いていたし、弁護士のプレゼンの際は裁判官の壇上から降りて傍聴席の仕切りの前の椅子に座ってパワーポイントの説明を正面から観たりしていました。
実は私が原告になっている原発メーカー訴訟は、最高裁まで闘ったが敗訴。この訴訟の最初の裁判官が朝倉裁判長でした。色々と熱心に質問してくれましたが、残念ながら直ぐに他の方と交代してしまいました。
勝俣、清水、武藤、武黒、小森の代理人に加えて、補助参加している東電の代理人を合わせると、法廷に顔を出すだけでも17名。私たち原告代理人は河合、海渡、只野、大河、甫守、北村の6名。他の原発裁判も多く抱えながら闘ってくださっています。今回の証人尋問も2人ずつ分担し、個性を生かした追及をしていて頼もしく感じ感謝しています。
口頭弁論後は毎回司法記者クラブで記者会見を開いていますが、もっと理解を深めてもらうため、記者たちが入れない進行協議の後でも、記者のためにレクチャーをしています。その努力もあって、いくつもの媒体がこの訴訟に注目するようになりました。判決が出る前にもどんどん記事を書いて欲しいと思います。原発事故を起こした東電の取締役個人に責任を取らせるため、社長や会長を辞めても責任を逃れることはできないと知らせなければなりません。
次回は、病気&リハビリを終えて小森明生被告の尋問が行われる予定でしたが、証言台に立つことは難しいとの医師の判断もあり中止となりました。10月29日(金)には現地進行協議が行われますが、原告は参加できず、裁判官と弁護士しか行けません。東電が市民を排除したいからでしょうが、裁判官にはしっかりと見てきていただきたい。そして11月30日(火)13時10分から80分間渾身の最終弁論が予定され、結審となります。引き続きご支援ください。 (木村結)
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